7団体に対し兵庫県が回答しました。│神出病院事件

11月28日、兵庫県は兵庫県精神医療人権センターを含む7団体が提出した要請書に対する回答を行いました。

 県は、下記文書回答に加え、口頭で、神出病院第三者委員会調査報告書が違法と指摘した『評議員会決議のない理事長報酬』について、「先ごろ、評議員会が追認決議を行った」旨、報告しました。

 7団体は回答を持ち帰り、協議の上、反論するとしています。

 第三者委員会調査報告書は、年間2億5千万にのぼる籔本雅巳前理事長に対する役員報酬が、医療法人における剰余金の配当を禁じた医療法54条違反に当たるとした上、法が定める評議員会の承認決議もなかったとして、神出病院を経営する兵庫錦秀会への返還を求め、さらにこれを看過してきた県の対応をずさんであるとして、指導監督権限の行使を求めています。

 今回の県の回答は、事実上、調査報告書の指摘を不当とし、兵庫錦秀会には運営上なんらの問題はなく、県の医療監視にも瑕疵はなかったとするものです。

 

第三者委員会調査報告書には、以下のような報告があります。

  • B前理事長が患者数にこだわった理由は,B前理事長が兵庫錦秀会から,役員報酬や保証 料・交際費等の経済的利益を得るためである。(中略)B前理事長が兵庫錦秀会の理事長に就任してからの役員報酬の推移は表1 B前理 事長の役員報酬の推移のとおりである。(中略)平成31年2月から辞任する令和3年9月までは月額で215 0万円という極めて高額となっている。(p126)
  • 病棟にカビの発生した箇所が多数存在するし,病室の掃除は行き届いていなかった。 このことは,患者にとって,療養するための環境として不適切であっただけではなく, 働く者にとっても適切な就労環境ではなかった。(中略)① 季節を問わず一年を通して病室の壁や天井にカビが見られる状態であり,梅 雨時は特にひどい。 ② なかでも浴室は特にひどく,ほぼ全ての浴室で浴槽の周囲だけでなく,脱衣 所の壁一面や天井にまで黒いカビが広範囲に生じ,一部には完全に穴が空いて いることが確認できる状態である。(中略)職員の中には,このカビの繁殖が患者,職員の健康に影響を及ぼすおそれも危惧し,「カビが生えているので直さないといけない」と病院の上層部に訴える者もお り,事務所のE2課長もそのことを訴えていたが,A 元院長は「これくらいええ わ。」として取り合わなかった。(p149)
  • A元院長が,「患者をとられる」等と言って,瀕死の状態になるまで院外受診をさせなかったことについて,A元院長からのプレッシャーがあったことを認めている医師がいる。この医師は,「神出病院では診られないので,内科の病院へ患者を回した医者が,患者数が減るのでA元院長から怒られていたこともある」と述べ,A元院長が上記状況を強引に推進して医師にも圧力をかけていたことがわかるエピソードを述べている。その他にも,「A元院長から患者を『転院させるな』と言われた」,「患者を出して(退院か転院)しまったら叱責される。自分も怒られたことがあるし,医局の医師全員怒られたことがあると思う」と述べる医師がいる。(p85)
  • 神出病院から提出を受けた資料によると,死亡退院患者数は,A 医師が院長に就任する前である平成21年までは年間概ね30人以下であったが,平成22年以降は年間50人以上となり,平成24年からは年間60~70人を推移,平成27年には80人以上,令和元年には年間99人もの死亡退院が発生しており,退院患者における死亡退院の割合は4割を超えている。これらの事情によると,上記の事実は,灰色のなかでも黒に等しいと言っても過言ではない事実と認定できるし,少なくとも退院を抑制しようとしていたこと自体は事実として認定することができる。(p85)
  • 人事記録上,看護職員が不足している病棟へ看護職員を異動した履歴のみを残したり,短時間だけ他病棟で手伝いをさせることで1日働いたようにしたりして,看護職員数が基準を満たしているかのように偽装していた。(p87)

これらのことから、兵庫県精神医療人権センターは、前理事長が私服を肥やすための営利第一主義が、暴行虐待の温床を形作ったことは明らかであると考えます。

 仮に県の姿勢が不変のものであるとすれば、回答の席上で7団体のメンバーが吐露したように「もはや行政監査によっては精神障害者の人権も命も守られない」ということになりかねません。言い換えれば、今回の県の回答には、精神障害者の人権も命も切り捨てるという宣言にも似た重大な問題がはらまれています。

 残念ながら、第三者委員会が明らかにした神出病院および行政監査の深刻な現実は、未だ多くの市民、県民の皆様に知られていません。私たち人権センターは、兵庫県が障害のあるなしに関わらず、すべての市民が安心して暮らせる地域であるために、市民の皆さん、行政で働く皆さん、医療機関で働く皆さん、報道各社の皆さんとの対話を続けます。皆様のお力をどうかお貸しください。

各社報道

・虐待事件の神出病院、兵庫県「定期的な報告求める」 従来通り対応に指導要望の7団体反発(神戸新聞・11/28)

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202211/0015848021.shtml

・神出病院虐待事件で兵庫県「引き続き医療法に基づく指導を行っていく」(サンテレビ・11/28)

神出病院虐待事件で兵庫県「引き続き医療法に基づく指導を行っていく」 - サンテレビニュース

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・兵庫県 虐待事件の「神出病院」に対し“定期的に報告求める”(NHK・11/28)

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20221128/2020020283.html